President & CEO Interview
創立から30年、社名を新たにアメリカから世界へ展開
Interviewer: Mika Nomoto |
Photographer: Masaki Hori |
Editor: Miho Kanai |
Interviewed on: January 8th, 2021 |
Published by: Y’s Publishing Co., Inc. |
リモートワークの普及や企業の海外拠点強化に伴い、ますます需要が高まるITサービス。海外で活躍する日系企業を30年にわたり支えてきた老舗IT企業の創業者が、起業の経緯や近況について語る。

アメリカで仕事をするに至ったきっかけは。
1980年代は日本国のプロジェクトとして、ヨルダンやサウジアラビアで日本の通信技術をインフラとして設置、試験・納品する仕事をしていました。86年ごろからはアメリカのプロジェクトにも参加しはじめ、そこで目のあたりにしたのが光通信技術でした。日本ではまだパソコンが各部署に1台しかないような時代、アメリカのオフィスでは各自にパソコンが与えられ、数百人の社員がソフトウェアでつながっている光景に圧倒されました。それに刺激を受け、通信やコンピューターの分野で仕事をするのであればアメリカのほうがビジネスチャンスがあると思い88年10月に渡米し、通信エンジニアリング会社に就職しました。
その会社ではどのような仕事をしていましたか。
日系金融機関向けのニューヨークオフィス立ち上げに伴うITシステムの構築を担当していました。そこで気づいたのが、アメリカでは業務が非常に細分化されているということ。1つの仕事にITシステムを選定するコンサルタント、製品メーカー、工事業者などが関わり、いくつにも専門性が分かれていましたが、少しスキルがあればそれらは1社でもまとめて請け負える作業でした。顧客がコンサルタントと一緒に各専門業者をマネージしないとプロジェクトが円滑に進まないという現場を、1年間その会社で経験しました。全てのプロセスを1社でできるようなコンセプトでITシステムを提案できれば商売のチャンスがあると考え、1990年5月にアメリカでシスコムを設立しました。
貴社の事業内容を教えてください。
当社は、マネージドサービスプロバイダ―(MSP)として、業務管理システム(ERP)、クラウド移行、セキュリティー、DX、ネットワーク・サーバー等のIT機器の設計・導入、またそれらソリューションの立案、導入から運用サポートの提供、維持、改善までの一貫したライフサイクルを提供しています。特に昨今ではセキュリティー対策強化の引き合いも増えている他、DXソリューションとしてビジネス業務のデジタル化(可視化・効率化)の支援などもしております。お客様の業種は商社、製造、金融、運輸、情報通信が中心ですが、その他にも、製薬、旅行、小売業など幅広い業種のお客様にサービスを提供しております。
リモートワークの普及により受注が増えたと聞いています。
そうですね。新型コロナウイルスの流行により日系企業も変わり、これまでは自宅から会社のサーバーなどへのアクセスを一部の上級社員にしか許さなかったのが、今はオペレーションレベルの社員まで可能になっています。そのせいで、最近は不正アクセス被害に遭っている企業もあり、セキュリティー関係の依頼が非常に多いです。加えて、被害に遭われた企業のシステム復旧作業や新しいセキュリティーシステムの構築に関する依頼も増えています。
パンデミック以降、予想していなかった事態はありますか。
これまで社内の財務や経理などを一元で管理するデジタルトランスフォーメーションのシステムは、プロがカスタマイズをしないと使えないため導入を躊躇するお客様が多くいらっしゃい
ました。しかしパンデミックによる労働環境の変化により、そういった企業も率先して導入す
るようになりました。ただ、新しいプロジェクトを依頼してくださるお客様は必ず業績が伸びています。また、2019年の夏ごろから米中貿易戦争がより激化したことにより、これまで中国に依存していた企業が北米やASEANの拠点を強化しており、特にアメリカの工場を増設する企業が多いです。これはあまり予期していませんでしたが、ますますこの動きが強くなると思います。
この会社はアメリカだけではないのだということを幅広く認知していただければと思います
Seishi Sato
President & CEO
伊藤忠テクノソリューションズと連携後、大きな成果を上げています。
弊社は長年アメリカ国内およびメキシコの現地企業と仕事をしてきましたが、日本側に大きな受け皿がなく提案しにくい状態でした。そんななか、伊藤忠テクノソリューションズは連携のオペレーションを強化したい、弊社は日本側のユーザーを取り込みたいという互いのニーズが一致し、2018年8月に提携に至りました。成果としては19年から売り上げが5割近く伸びています。市場が拡大したこともありますが、そのうちの3割強は両社が共同で進めている仕事が貢献しています。これまでいくつかの企業と提携してきましたが、ここまでうまくいったのは初めてです。
現在の課題は何ですか。
2018年までは革新的な成長戦略が描けなかったため、頑張っても頭打ちという状況下で、下の世代は不満を持っていたことでしょう。ただ、新しいことを始めると少なくともと3年ほどは赤字ですから、その期間に耐えられる財務体制を築いて新しい戦略を実行していくというのが現実的です。また、顧客の85 〜90%は日系企業ですが、アメリカに拠点がある日系企業の数には限りがあります。次は米系企業を取り込むため、2020年10月からSIソリューション部門に米系の人材を採用し、トライステートを皮切りに米系企業の開拓に取り組んでいます。
ビジネスソリューション部門の拡大について教えてください。
設立当時からネットワークやサーバー構築などインフラ事業が中心でしたが、お客様の声を聞くと今度は業務や財務、製造ラインなどを管理するソフトのニーズが高まってきたのです。これらのニーズを取り込むためにビジネスソリューション部門を立ち上げたのが2005年。15年経ちやっとものになってきています。同部門には東京とニューヨーク合わせて約40人いますが、需要の拡大に合わせて今後2倍くらいに人員を増やし、強化していく予定です。
デジタル化できる業務の例は。
初歩的なものですと経費の精算や勤務表の計算がデジタル化できます。製造現場なら仕入れ数、生産数、出荷数、在庫数、売値など、毎日の数字をデジタル管理できます。アメリカの現場だけでなく日本本社側でも現地側の製品管理の状況を瞬時にオンラインで把握できるシステムというのがグローバル企業には必要ですから、そこにフィットするような製品を提案しています。

日米のIT技術の差をどう捉えていますか。
オンラインサービスを例に挙げると、技術の差は商業文化の違いとも捉えられます。アメリカは80年代、テレフォンショッピング全盛期でした。これだけ国土が広いと自分の欲しいものが身近にないということは当たり前ですから、遠隔で注文するという商業文化が根付いています。オンラインサービスにも抵抗がないので、オンライン技術も発達しやすいのでしょう。一方で、日本では店頭で商品を吟味して購入するという対面的な消費が重視されており、今後もこの文化は残ってくのではないでしょうか。それは技術が遅れているというのではなく、文化の違いと言えますね。
30 周年の新しい動きなどは。
これまでほとんどの仕事がアメリカ、カナダとメキシコでしたが、30周年を迎えた今は北米・中南米の20ヵ国弱、それからASEANの国々で事業を展開するまでになりました。そのため、2020年2月1日に社名を「シスコム・グローバル・ソリューションズ・インク」に、さらにスローガンも「THINK LOCAL, ACT GLOBAL」へ変更しました。現地側のことを考え、グローバルに対応するという目標に変えて事業を運営し、この会社はアメリカだけにとどまらないということを幅広く認知していただければと思います。同時にウェブサイトもリニューアルしました。
最近の個人的な変化は。
弊社はパンデミック以前からリモートワークを導入していましたが、経営者としてはほとんど社員が来ない状況に非常に不安を感じていました。社員が生き生きと仕事をしている顔を見るのが自分のモチベーションに繋がりますからね。しかし、みんな自宅で一生懸命働いてくれていますから、その姿を見ていると経営者として少し考えを変えていかなければと思っています。将来的に週2 〜3日の出勤を継続したり、育児中の社員は自宅で仕事をしてもらったり、社員が働きやすい環境を整えていきたいです。
座右の銘を教えてください。
「艱難(かんなん)汝を玉にす」。人は困難や苦労を乗り越えてこそ立派に成長できる、という中国のことわざです。人は自然と簡単で無難な道に行こうとします。私生活はそれでいいと思いますが、事業をやる場合はそうはいきません。簡単な仕事は競争が多いので、3 〜5年で先細るか競争に負けてしまうでしょう。プライドを持って事業を続けるには、多少難しいところを狙い、仲間をつくって、それで軌道修正をしながら進めていく。結果的には10年、20年かかりますが、自分も仲間も鍛えられ、大いに成長した先に、達成感を得られるというふうに考えています。目先の損得に惑わされない、長期的な目標、揺るがない意志が非常に大事だと思います。
元の記事のPDFを見る:
Media Spotlight
& Employee Spotlight
SYSCOMで活躍する社員たち: ケビン岩橋さん
How does Kevin Iwahashi solve problems? Clear vision and a focus on people. “Successful companies have a clear vision of where they’re going.”
Executive Message 2024: 東京支店のビジョン
エグゼクティブ・メッセージ2024:東京支店長塚瀬 康之『成長を続ける東京支店:2024年の挑戦と展望』
SYSCOMで活躍する社員たち: 中村まいこさん
Ask for help and don’t be perfect: Maiko Nakamura’s simple advice. “Our product isn’t just solutions, it’s people.”