DOWA Metals & Mining America:Microsoft Power Pagesを利⽤した顧客専⽤ポータルサイトの開発事例

1. 導入したサービスのカテゴリService Category
- 導入したサービスのカテゴリ
- Microsoft Power Platform>Power Pages
- クライアントの業種
- 非鉄金属リサイクル業
2. 導入背景Introduction Background
DOWA Metals & Mining Americaでは、顧客から使用済みの⾃動⾞の部品をリサイクル原料として買い取り、その中から貴⾦属(プラチナ、パラジウム、ロジウム)をリサイクルする事業を⾏っています。その取引のフローは、顧客が納入したリサイクル原料をロットごとにサンプリングおよび分析し、貴金属含有量を算定し買取額を決定するというものです。
買取額は貴⾦属の含有量によって変動します。含有量は⾃動⾞の種類や年代によって細かく異なるため、同社では、顧客がリサイクル原料を集荷する際の補助資料としてカタログを提供し、定期的に⼿動で情報を管理・更新していました。このことから次の4つの課題を解決するためにソリューションの開発に取り掛かりました。
・顧客との取引・情報共有がメールベースで時間がかかる
・顧客からの情報に不備が多く、確認作業に必要以上の時間を要する
・社内の情報を多数の顧客と安全に共有したい
・常に変動する⾦属価格に対応したい
クライアントの声
メールでの顧客との取引は、社内外ともに⼯程が複雑で、ミスの誘発にも繋がっていました。そのため、この⼿間と不備を解消するために「定型業務を⾃動化したかった」というのが依頼理由です。
⾃動化について調査したところ、アプリケーションならコストを抑えられると分かりました。しかし、具体的なアプリケーションの種類や機能の調査・把握までは難しく、SYSCOMさんにご相談することにしました。
3. 導入サービスについてService
今回は導⼊コストや導⼊後の保守の観点から、Power Platform: Power Apps Portalを導⼊しました。それは、同社が既にMicrosoft 365を導⼊しており、Power Apps Portalでのアプリケーションが他のサードパーティーと⽐べて親和性が⾼く最適であると判断したからです。
Power Apps Portalとは、Microsoftのクラウド型データベース「Dataverse」に保管しているデータを外部にも共有できるポータルページを作成するツール、およびアプリケーションのことです。特徴は外部にデータ共有できること、共有先を特定のユーザーに絞れること、データのアップロード・ダウンロードの権限も特定のユーザーに絞れることです。 今回、Power Apps Portalを選ぶ決め⼿となったのは、同社がMicrosoft 365の環境をお持ちだったことと、アプリケーションの開発期限が短かったことでした。
クライアントの声
Power Platformのことは知りませんでしたが、SYSCOMさんの提案内容が論理的で分かりやすかったので、納得したうえでお願いしました。
すでにMicrosoft 365を導⼊していたため、別のサードパーティーを導⼊することに⽐べて抵抗感はあまりなかったです。
4. 導入前課題についてProcess & Problem
アプリケーションの導⼊にあたり、以下2点の課題を解決する必要がありました。
(1)顧客別の契約に沿った貴⾦属の取引価格と数値の表⽰
(2)顧客から納品されたロットの確認にかかる⼿間の削減
まずは顧客がデータを確認するカタログと、ヘッジ残⾼を確認できるポータルサイトを作成しました。顧客によって契約内容が異なるため、契約に沿った数値を表⽰する必要があります。そこで、ポータルサイトへログインする顧客のユーザーアカウントによってカタログに表⽰する数値を変動させる仕組みを実装しました。
次に、顧客向けのページを2種類ご⽤意しました。リサイクル原料の取引⽤パッケージに取り付けるラベルを発⾏するページと、原料の取引状況とステータスを管理するページです。
クライアントの声
顧客の納品物にロット名の記載がなかったり、連絡と異なるロットが納品されたりするケースが多々ありました。しかし取り扱う商品が⾼額なため、ロットを取り間違えると⼤きなクレームに繋がる可能性があり、ミスを未然に防ぐためには膨⼤な確認作業が必要でした。
そのため課題解決策として、顧客側でパッキングリストの作成とラベルの発⾏をしてもらうことを考えました。
5. 導入時の工夫Ingenuity
2022年の終わりまでにアプリケーションの使⽤を開始する計画でしたが、優先度の⾼い機能をPower Apps Portalへ実装する必要があったため、下図のように開発フェーズを2つに分けました。
2022年 5⽉−6⽉ |
---|
プロジェクトの開始 |
2022年 11⽉4⽇(第1フェーズ完了) |
---|
カタログとヘッジ残⾼確認⽤のポータルサイトのリリース |
2023年 1⽉27⽇(第2フェーズ完了) |
---|
パッキングリスト⽤のQRコードなどの⾃動⽣成機能をポータルサイトへリリース |
第1フェーズとして、年内に顧客がカタログ閲覧とヘッジ残⾼の確認を利⽤できるスケジュールでサイトの開発を進めました。そして第2フェーズのパッキングリスト⽤のQRコードの開発中は、公開中のカタログに影響が出ないようにアプリケーションの開発・導⼊を進めました。
今回は、これらの開発がある程度進んだタイミングで同社からフィードバックを受けながら進める「アジャイル開発」という⽅式をとり、本格的な始動に向かいました。
クライアントの声
今回必要なのは、カタログとヘッジ残⾼、パッキングリストの3つの機能が搭載されたアプリケーションでした。中でもヘッジ残⾼とパッキングリストは、問い合わせが多く、煩雑な業務でもあったため、特に優先度が⾼い機能でした。
その中でパッキングリストの実装は時間がかかると判明したため、まずはヘッジ残⾼とカタログの開発を進め、ヘッジ残⾼は利便性と優先度の⾼さから、年内での開発・リリースをご依頼しました。
リリース直後は、アプリケーションの⽴ち上げとパッキングリストの作成に1枚あたり5分ほどかかっていましたが、SYSCOMさんに改善いただき、現在は1枚あたり1分ほどでの作成が可能になり、業務の効率化を実現しています。
顧客側のアプリケーションの導⼊については、説明が必要な顧客もありましたが、基本的には社内での対応で済みました。
6. 導入時の成果Achievement
これまでラベルを作成する際には顧客とメールでのやり取りが必要でしたが、この⼯程の⼀部が⾃動化によって不要となったため、業務スピードが上がったとのことです。
また⼯程が減ることで⼈為的なミスも減り、リカバリー⼯数の⼤幅削減という成果も出ています。
ポータルサイト利用率

業務効率

クライアントの声
これまでにアプリケーションを導⼊した顧客は5社ほどですが、全体の取引量の7〜8割を占めているため影響⼒が⼤きく結果が出ています。新しい顧客に対しては、順次オリエンテーションを⾏っている状況です。
今回の導⼊により、感覚値ですが20%以上は業務効率が改善しました。⼈為的ミスの発⽣率と情報の正確性に⾄っては劇的な改善です。
現在、このアプリケーションは全社的に好評で、ヨーロッパやアジアをはじめ他の拠点でも展開しようという話が出ています。
7. プロジェクトメンバー紹介Members Introduction
エンジニア:ユージーン・ウィルキンソン
ビジネスアプリケーションディベロップメント PPテクニカルコンサルタント。ソフトウェア開発会社にてクラウドソリューションの提案・運⽤⽀援を担当した後、2020年にSYSCOMに⼊社。主に在⽶⽇系企業向けにMicrosoft 365を使ったアナログ業務のデジタル化の開発/運⽤サポートなどを実施。
セールスエンジニア:村松守∕営業:安⽥隆⼀郎
Mamoru Muramatsu(村松守): セールスエンジニア・ソリューションアーキテクトとしてネットワーク、セキュリティ、ボイス、インフラについて、⼤規模から中⼩企業の様々な顧客へ向けてソリューション提供。顧客⽬線の細かな要望を反映する提案を⼼掛けている。
Ryuichiro Yasuda(安⽥隆⼀郎): 約10年にわたり、ITソリューション事業に従事。計200社以上の企業へのセキュリティ対策を含めた総合ITソリューションの提案・サポートを実施。現在はSIソリューション事業製造・製薬・物流部⾨シニアディレクターとして在⽶⽇系企業様をサポート。
8. SYSCOMへの感想Impressions for SYSCOM
クライアントの声
SYSCOMさんには5年ほどITインフラを含めて対応いただいています。いつも丁寧に対応くださるので⼤変助かっており、弊社アメリカ拠点にはITチームがないため困ったことなどがあれば、すぐにSYSCOMさんにご相談しています。
今回のアプリケーションの開発についても、迷わずSYSCOMさんにご相談しました。その結果、課題の解決に繋がったことを関係者⼀同、⼤変嬉しく思っております。
9. まとめConclusion
SYSCOMでは、営業だけでなく、エンジニアも初期段階から案件にしっかりと⼊り込み、クライアントの課題を解決するソリューションをご提供しています。
アプリケーションの開発を検討されている企業には、早く簡単に作れるMicrosoft Power Platformがおすすめです。このソリューションには、すでにMicrosoftライセンスをお持ちの企業の場合、同じMicrosoft環境下で構築するため不具合が発⽣しにくいという特徴もございます。
SYSCOMには、Microsoft Power Platform導⼊⽀援専任のエンジニアが多数在籍しています。Microsoft 365の導⼊から、Microsoft PowerPlatform導⼊、データの収集・解析・予測や、新しいアプリケーションの構築など幅広い⽀援が可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。