企業に変革を起こす方法として、DX人材を確保・育成するというものがあります。DX人材の職種は複数あり、担当する業務は多岐にわたります。
企業の組織を変えるにあたって、DX人材の導入を検討する企業は多いです。しかし、DX人材不足に悩む企業も多く、人材の確保までに時間を要するケースも少なくありません。
当記事では、DX人材の定義とIT人材との違い、DX人材が担う職種といった基本情報を解説した上で、DX人材不足を補う市民開発者について紹介します。
1.DX人材とは
組織の経営課題を解決し変革するために、企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進しています。DX推進をスムーズに行うためには、必要なスキルや適正を兼ね備えたDX人材が欠かせません。
ここでは、DX人材は、従来必要とされてきたIT人材とはどのような違いがあるのかを解説します。
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1-1.DX人材とIT人材の違い
DX人材とは、以下のような人材が挙げられます。
- デジタル技術に詳しいエンジニア
- データ活用に精通したデータサイエンティスト
- デジタルビジネスの企画立案を行うデザイナー
- 自社の経営環境を理解し、全体を取りまとめるプロデューサー
DX人材と聞くと、エンジニアやデータサイエンティストといった直接デジタルに関連する人を想像する人は多いでしょう。実際には、プロジェクトを企画立案したり、取りまとめたりする人も含めてDX人材と呼びます。
一方、IT人材はセキュリティエンジニアのように、自社のITシステムを保守管理する人を指します。根本から企業を変革するDX人材とは異なり、IT人材は従業員が安心して使用できるようネットワーク環境などのシステム周りを整備します。
2.DX人材が担う職種7つ
DX人材は大きく7つの職種に分かれており、それぞれ役割が異なるため、求められるスキルや知識も変わってきます。企業がDX人材を採用する際には、それぞれの職種の特徴を理解した上で、適切な人材を選ぶことが重要です。
以下では、7つの職種について詳しく解説します。
2-1.ビジネスプロデューサー(プロダクトマネージャー)
ビジネスプロデューサーは、DX化やデジタルビジネスを実現するためにリーダーとして先頭に立ち、企画に関わるチームメンバー全員を統括する役割を担います。別名プロダクトマネージャーとも呼ばれます。
自社の経営方針や開発製品のビジョンを明確にし、調査や目標設定を行い会社として取るべきDX戦略を決定する、責任が重い職種です。経営者や事業部門の部長など、社内トップクラスの人材が担当することもあり、俯瞰的な視点でDX化を推進します。
企画に携わるさまざまなメンバーの意見を理解しまとめるためには、マネジメント能力やコミュニケーションスキルに加え、デザインやITに関する知識も必要です。
2-2.ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、ビジネスプロデューサーの戦略にもとづき、市場ニーズから新たなビジネスモデルを立案し推進します。実現可能な企画を立てるためには、発想力はもちろん、自社のビジネスに関する知識も不可欠です。
また、スムーズに企画が進むよう、社員や顧客、取引先といったステークホルダーとの調整役も担います。チームメンバーの意見が食い違ったり議論になった際は、ファシリテーターとして意見をまとめ、お互いが納得いく形で合意できるようサポートします。
2-3.データサイエンティスト/AIエンジニア
データサイエンティスト/AIエンジニアは、事業に必要なビッグデータの分析や解析を行う高度専門人材です。
ビッグデータから必要な情報を引き出しAIやIoTを活用するためには、統計に関するスキルはもちろん、プログラミングやデータベース、数学などさまざまな知識が求められます。また、正確な情報を引き出すためにはビジネスへの理解も欠かせません。必要に応じて、ビジネスデザイナーなどとコミュニケーションを取ることも求められます。
2-4.UI/UXデザイナー
UI/UXデザイナーは、DXで使われるシステムのユーザー向けデザインを担当する職種です。見た目が良いデザインであり、かつ使い勝手が良いものを開発することでユーザー満足度が上がり、利用者増加につながります。
顧客満足度を上げるデザインを考案するためには、デザインに関するスキルに加えて、なぜそのデザインを採用するのか分かりやすく説明する能力が必要です。
2-5.アーキテクト
アーキテクトは、ビジネスデザイナーが立案したDXやデジタルビジネスに関する企画を実現させるために、システムを設計します。要件定義や課題分析などを行い、企画実現のために必要な構造を作るのが主な仕事です。
技術的に問題のないシステムを作る他に、安全性や柔軟性も必要となります。そのため、最新のデジタル技術や経営課題を理解し、ビジネス的な視点をもっていることが求められます。
2-6.エンジニア/プログラマ
エンジニア/プログラマは、アーキテクトが設計した仕様をもとに、システム実装やインフラ構築を行う職種です。Pythonなどを用いてコーディング作業をするため、プログラミングやエンジニアリング能力が求められます。
DX化にあたっては物流や店舗など、現場で使用するシステムを構築するケースが多いため、ハードウェアの知識も含め幅広い理解が必要です。また、システム運用開始後は、エンジニア/プログラマが保守担当となります。
2-7.技術エンジニア
技術エンジニアは、AIや機械学習、ブロックチェーンなどのデジタル技術を扱う職種で、先端技術エンジニアとも呼ばれます。
既存のエンジニアと異なり、AIやディープラーニング、ブロックチェーンなどを用いてシステム開発を行うため、幅広い分野の知識が必要です。また、最先端技術を取り扱うため、急速に変化するトレンドについていけるよう、情報を常にアップデートすることが求められます。
3.DX人材不足を補う市民開発者とは?
市民開発者とは、IT技術部門に属さずに、ローコード/ノーコードのツールを利用してアプリケーションを開発する人を指します。プログラミングスキルなどがなくても、Microsoft Power Platformなどのツールを利用することで、アプリケーションの作成が可能です。
市民開発者が注目されるようになった背景としては、DXにたずさわる社内人材の不足が挙げられます。
経済産業省が2022年3月に発表した「デジタル人材育成プラットフォームについて」によると、日本の企業のうち30.8%が大幅なDX人材不足を感じており、やや不足していると感じている45.2%と合わせると、76%もの企業がDX人材不足を感じています。
3-1.市民開発のメリットと課題
市民開発には、次のようなメリットがあります。
- IT部門の負担を減らせる
- IT部門に依頼するよりも速く開発できる
- ニーズに合ったアプリケーションを開発できる
DX化に必要な人材獲得ができていない企業が多い現状を考えると、IT部門で働く社員の負担がかなり大きくなっていると推測できます。市民開発によって、IT部門のビジネス環境改善につながるでしょう。
また、IT部門にアプリケーションの開発を依頼すると、完成までに時間がかかる可能性がありますが、市民開発では開発時間を短縮できます。さらに、現場をよく知る担当者が開発することで、不要な機能をそぎ落とし、ニーズに合ったアプリケーションを作成できるのがメリットです。
メリットが多い一方で、市民開発には、作成したアプリケーションの更新や品質管理、セキュリティ面の強化などに課題が残ります。
アプリケーションは一度作成してしまえば完成ではなく、定期的に更新が求められます。また、アプリケーションのセキュリティ面に問題がないかを市民開発者が管理するのは難しいです。更新や品質管理については、市民開発者が研修を受けスキルを高めるか、専門知識を持つIT部門の担当者に依頼する必要性が出てくるでしょう。
まとめ
DX人材とは、デジタル技術に詳しい人で、プロジェクトを企画立案したり取りまとめたりする人材のことです。自社のITシステムを保守管理するのが主なIT人材とは、担当する業務が異なります。
DX人材には7つの職種があり、それぞれ人材に求められるスキルに違いがあります。専門性や技術に加えて、マネジメント能力やコミュニケーションスキルが求められるので、職種に対応した人材を配置しましょう。
近年は、市民開発者はDX人材不足を補う職種として重要視されています。SYSCOMでは、Microsoft Gold Partnerとして、Microsoft Power Platformを活用したデータの収集から解析・予測、新しいアプリケーションの構築などを支援しています。
Microsoft Power PlatformはERPやCRMなど、様々なビジネスアプリケーションから生まれるデータを素早く簡単に活用できる4つのツールから成り立っています。
・Power BI:データを分析・予測
・Power Apps:アプリ作成・アクションの実行
・Power Automate:データの連携・作業の自動化
・Power Virtual Agent:チャットボット機能
SYSCOMでは、企業規模や業種に関わらず、お客様の業務やニーズを分析し、最先端のテクノロジーを通して、お客様のデジタル変革を支援しています。